nasneに録画しておいたNHK BS1スペシャル「最速に挑む!ホンダF1はなぜ勝てたのか」を1/10に視聴。ホンダF1の第2期(1983~1992)はバブルの真っ最中で地上波放送されておりジャパンマネーの力か日本人ドライバーも複数人いましたね。1988年はアイルトン・セナ擁するマクラーレン・ホンダの絶頂期で16戦中15勝とホンダエンジンの無双状態。第3期(2000~2008)はワークス体制で参入し、現在は第4期(2015~)となる。番組は2019シーズンのレースをメインに2015年からのホンダの苦闘を振り返る内容。
2015年に7年振りにF1参入したホンダはマクラーレンとタッグを組み1980年代の黄金期の再来を期待されたが、F1のルールはガソリンエンジンからハイブリッドであるパワーユニット(PU)に移行しており、ノウハウ不足による技術開発の遅れからパワー不足と多発するトラブルに見舞われる。2015年の日本GPではドライバーであるフェルナンド・アロンソが無線で「GP2エンジン、F1のレベルにない」とホンダのパワーユニットを酷評。ネットでも「技術者の力不足は否めない」「勇気ある撤退を望む」などホンダ批判が溢れた。マクラーレンとの関係は悪化し一度も表彰台に登ることなく2017年にサプライヤー契約を解消。2018年からトロロッソにホンダジェットの技術支援を受けた改良版パワーユニットを提供しバーレーンGPで4位に入賞するなど信頼性は大きく向上、2019年からレッドブルにもパワーユニット供給を開始した。2018年までのレッドブルはシャシー(車体)性能は優れているがルノー製パワーユニットのパワー不足で年間2勝程度に留まりメルセデスやフェラーリから大きく遅れをとっていた。
2019開幕戦オーストラリアGPでレッドブルホンダのフェルスタッペンがホンダとして11年振りの表彰台(3位)を獲得し期待が膨らむが、以降第8戦まで全てメルセデスが優勝しレッドブルホンダは3位が2回のみと低迷、フェラーリの後塵も拝し3番手が定位置となる。
出典:https://plaza.rakuten.co.jp/cleversloth/diary/201907010000/
その間もホンダはパワーユニットのアップグレードを続け、第8戦で導入したSpec3で第9戦オーストリアGP予選で初のフロントロー(2番グリッド)を獲得し優勝への期待が高まる。しかしスタートに失敗し7番手まで後退するも、怒涛の追い上げで残り24周でフェラーリのベッテルをぶち抜き3位に浮上。残り15周でオーバーヒートに苦しんでいるメルセデスのボッタスをぶち抜き2位、残り13周でホンダは「エンジンモード11、ポジション5」とパワーユニットの出力を最大限に設定するようフェルスタッペンに指示。残り2周でトップのルクレールをかわし1位でチェッカーを受け、ホンダとして13年振りの優勝を飾る。第11戦ドイツGPは荒れた天候でタイヤのチョイスが難しく、チームの分析力と戦略が問われるレースとなる。予選2位のフェルスタッペンはスタートで4位に後退するがタイヤ交換5回の荒れたレースを攻略し今季2度目の優勝、第3位にトロロッソのクビアトとホンダは表彰台に2人を送りこむ。第12戦ハンガリーGP予選ではフェルスタッペンが自身初となるポールポジションを獲得。決勝ではメルセデスのハミルトンとの一騎打ちとなったが残り4周で抜かれ2位フィニッシュ。Spec3のパワーユニットはメルセデスと互角に戦えることを証明し、既にフェラーリを超えたと思われた。
しかし、夏休み明けの13~15戦でフェラーリが3連勝、フェラーリが想定外に早くなったことにホンダ開発陣は驚愕する。第13戦から第19戦までレッドブル・ホンダの表彰台は僅か2回、優勝は遠く3位が限界となる。ホンダは技術開発を加速させるためトライ&エラーを早く回す必要がありPU内部部品の内製化を決断。社内の抵抗に合いながら社内製作所の協力を採りつけ、外部メーカーが鋳造で作っていたキーデバイスをアルミの削り出しで内製化することに成功、軽量化と信頼性の向上を図った。また、燃料の燃焼効率を向上させるため、燃焼室の形や燃焼方法を新たに開発。CO2削減のための基礎研究部門が燃料の適切な配合を検証し、その配合で供給メーカーであるMobilに燃料を発注するなど地道な改良を加えた。
そして迎えた第20戦ブラジルGP、フェルタッペンは2度目のポールポジションを獲得。スタートを決めたフェルスタッペンは1位で周回し、2位ハミルトン(メルセデス)のバトルが続き、残り19周にボッタスがコースアウトしセーフティーカー(SC)が導入された。このタイミングで1位フェルスタッペンは3回目のタイヤ交換でピットイン、2位のハミルトンはピットインせず逆転を許すがフレッシュなタイヤを履いたフェルスタッペンは直ぐにハミルトンをパスし1位に復帰。さらにフェラーリ2台が同士討ちでリタイヤ、その間にトロロッソのガスリーが2位に浮上。残り1周ハミルトンの猛追を受けるがホンダパワーで0.062秒差の2位を死守、ホンダのワンツーフィニッシュとなった。
出典:https://dailynewsagency.com/2019/11/21/pit-stop-world-record-182s-0wn/
また、ブラジルGP決勝ではタイヤ交換のピットストップ作業も世界記録の1.82秒を達成。レッドブルの幹部はホンダと組むようになってからきちんとパワーユニットを準備してくれるのでピットクルーの帰りが早くなった。そのおかげで日曜日(決勝)に向けて疲れがたまらず、あの結果に結びついたとホンダの姿勢を絶賛したのであった。
2019シーズンのレッドブル・ホンダの成績は優勝3回、表彰台9回、コンストラクターズでレッドブル・ホンダ3位、トロロッソ6位。フェルスタッペンは自己最高のドライバーズポイント3位を獲得。これはジェット部門や社内製作所に基礎研究所などホンダの総力を結集できたこと、ホンダとレッドブルレーシングがお互いをリスペクトしONE TEAMになれた結果ですね。
エースドライバーのフェルスタッペンはレッドブルとの契約が2020年末までとなっており、2021年にはメルセデスに移籍すると噂されていたが、1月7日に突如2023年末まで契約を延長したと発表。これはフェルスタッペンが2020シーズン以降、レッドブル・ホンダでドライバーズポイント1位を獲得できることを確信しているからである。ホンダとレッドブルレーシングとの契約は2021年末までで、その後ホンダはF1から撤退する可能性もある。しかしワールドチャンピオンを狙えるチーム、狙えるドライバーからパワーユニットの供給を熱望されている訳で、絶対に撤退してはいけない。
おしまい