白土 三平 - 三平の食堂

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『三平の食堂』  白土 三平
発売日:1998年4月1日
発売:小学館
定価:1,680円(税込)

房総の海辺に居を構えコミックを描き続ける一方で海に潜り、山に分け入り、漁師と酒を酌み交わす。自ら狩猟採集民の末裔と称し、自給自足の生活を実践する白土三平氏はこんなものを食べてきた。飢餓の記憶も遠くへと去った今、人間が自然と格闘しつつ得てきた食の原風景をたどる試み。アメフラシ、クラゲ、ナマコからさまざまな茸までを食べつくす。

カムイの食卓」のパート2、正確には「白土三平の好奇心」の下巻である。「カムイの食卓」と同じく本作も初版発行が1998年4月1日なので、続編というよりは上下巻で完結する民俗学的フィールドノート食エッセイ。17年前の中古本であるが市場では定価をはるかに超える金額で取引されている貴重本である。

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【ス貝のたたき】
かつて漁師たちの酒の友だったニシ貝やホラ貝もめっきり獲れなくなり、代わりに漁師たちが注目したのがス貝。大きいものは子供の頭ほどになるが、値が安く茹でてオデンの具や酢の物で食していたらしいがある漁師がタタキを開発。ス貝はヒトデを食べるといわれているので内臓を綺麗に取り除き、タマネギと味噌、トウガラシを入れ包丁で丁寧に叩く。これはカップ酒の冷やで決まりでしょう。

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【蟹漬け-ケジャン-】
ケジャンはモクズガニを使った朝鮮の伝統的な塩辛であるが、このカニには恐ろしい肺ジストマが寄生している。造る際には必ず守らなければならない手順がある。よく洗った蟹を生醤油に1晩漬け込み、翌日つけ汁の醤油を沸騰させ冷ましたら再び1晩漬け込む。これを2回繰り返したら甲羅の中に薬味(ニンニク、トウガラシ、アサツキ、荒く擦った白ごま)を詰めタコ糸で結わえ、再び沸騰させ冷ましたつけ汁に1カ月漬ければ完成。1年はもつらしい。柔らかくなった殻ごと磨り潰し塩辛として食する。甲羅にご飯を詰めれば何回でも味が染み出てくるらしい。

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【うみょうじん酢味噌和え】
アメフラシですね、房総の漁師もあまり好んでは食べないらしい。戦後の食糧難に救済食として食べた記憶がネガティブな印象になってしまうのだろう。内臓を取り除き60°位の湯でアクを取りながら茹で上げれば焼き肉やのホルモンのミノような噛みごたえで無味無臭とのこと。さっぱり系なのでよく冷えた白ワインでいかがでしょうか?ちなみにアメフラシが防御の際に吐く紫色の体液は頭につくと確実に禿るらしい、気を付けましょう。

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【ナマコの茶漬け】
左キンコナマコの生醤油びたし、右がマナマコの茶漬け。キンコナマコは普通のナマコとは科か属が異なるらしい。内臓ごとタクワンを切るように刻み、醤油を多めにかけて完成。そのまま喰ってもよいが2~3日寝かせると柔らかいナマコのような歯ざわりとトロリとした内臓の食感が相まって磯の香り漂うまたとない味を醸し出す。これはキュッと熱燗でしょうね。ナマコの茶漬けは普通に内臓を処理したマナマコをダシ汁でシンプルに。歯が弱った中高年にピッタリのナマコの喰い方ですね。

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【イナダのガワ】
釣りたてのイナダを内臓共々タタキにし、水に味噌を溶いて薬味を入れたなかにぶち込み水ナマスを作る。その水ナマスを飯にぶっかけた漁師飯がガワと呼ばれるらしい。魚の喰いが立った漁では釣りながら交代でかき込む漁師飯。基本旨そうだが内臓はタタキ込まないで欲しい。薬味はネギと生姜のようだが大葉とミョウガもお願いします。あとできればイナダではなくアジかメジマグロかカツオがイイのですが。正直な話イナダはあまり好きではないです。

おしまい