安生 正 - ゼロの迎撃

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『ゼロの迎撃』安生 正
発売:2014年07月10日
販売:宝島社
定価:1,400円+税

根源的な命題を日本人に問いかける傑作エンターテインメント!活発化した梅雨前線の影響で大雨が続く東京を、突如謎のテロ組織が攻撃する。自衛隊総合情報部所属の情報官・真下は、テロ組織を率いている人物の居場所を突き止めるべく奔走するが……。核が持ち込まれたという情報にかき回される自衛隊総合情報部。朝鮮人民軍中国人民解放軍に翻弄される日本政府。東京を舞台に、死闘が始まった。

この小説は安全保障に関し日本のお寒い現状を警告する意味において秀逸なクライス・サスペンス小に説ですね。北朝鮮の特殊部隊が東京の錦糸町に潜入し市街戦が勃発する、日本政府はただちに国家安全保障会議を開催するが、正式な宣戦布告が無いこと、テロ組織の国籍が特定できないこと、自衛隊の攻撃により市民財産を破壊した場合の保障問題が解決されていないことの理由により、自衛隊の防衛発動を躊躇する。さらに憲法第9条の交戦権の放棄と個別的自衛権は案件毎に決定するとし法律解釈を曖昧に先送りしてきた結果、テロリストの攻撃により一般市民、警察機動隊に多数の死傷者がでている最中に政府閣僚と役人は枝葉末節な法律解釈を議論する事態に陥り、テロの犠牲者は時間と共に増えていく......。

現実にこのようなテロが起きた場合、まさにこの小説と同じ事態に陥るだろうと容易に想像できてしまう。自衛隊専守防衛に徹し海洋および航空管制による水際での防衛を想定しており、突如勃発する市街戦(テロ)では機能不全を起こす。まさに今日の東アジア情勢を勘案すれば一刻も早く国家として現実的かつ有効な防衛システムを構築する必要がある。2日後の衆院選ではよく考えて投票しましょう。ただ、小説の出来としては70点。特殊部隊のリーダーの戦術も?だし、迎え撃つ防衛省情報分析官の主人公の人物設定もブレるし、戦闘シーンの描写も物足りない。北朝鮮特殊部隊による日本進攻といえば村上龍「半島を出よ」、福井晴敏亡国のイージス」などの傑作があり、比較すると見劣りするのは仕方ないところか。

おしまい