島田 雅彦 - 英雄はそこにいる

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『英雄はそこにいる』 島田 雅彦
発売日:2012年5月2日
発売元:集英社
定価:1,680円(税込)

天才暗殺者とシャーマン探偵。真の敵を暴け!神の子に生まれた天才暗殺者サトウイチロー、シャーマンの子に生まれた探偵ナルヒコ。闇に隠れた敵の正体が暴かれるとき、新たな神話が始まる。血と恋と歴史がスパークするミステリアスな長編小説。

個人的に島田雅彦さんは小説家というより思想家だと思っている。なので以前も数冊手にとってみたものの左右の思想が入り乱れ難解な内容であったため読了できず挫折した経験がある。本書も予備知識なく読みだしたが、シャーマンの才能をもつナルヒコ青年と古代人のDNAを持つ稀代の暗殺者サトウイチロー全世界の政治経済を裏から操る「ブラックハウス」の親玉「デウス」と死闘を繰り広げる非常に明快な冒険小説となっており最後まで面白く一気読みでした。
古代人のDNAを有するサトウイチローは超人的な才能と美貌を有し、現代に蘇った「ヘラクレス」。シャーマンとヘラクレスが力を合わせ巨悪「デウス」と戦うオカルトチックな神話のようだが、戦後民主主義の在り様や家族愛の要素も取り入れた
エンターテイメントな小説に仕上がっている。エンディングもこれで良かったと思わせる納得の終わり方。私は好きですね。

本書は「カオスの娘」の続編となっています。本書だけ読んでもまったく問題ありませんが、よりスムーズな物語世界を求める方は「カオスの娘」を先に読むことをお勧めします。

おしまい